全国優勝レベルの中学生投手が抱えていた悩み、「踏み出し足に乗れない」を解決

和歌山遠征、二人目の出会い

和歌山遠征でのご縁で出会ったのは、中学一年生の投手で、全国優勝も経験している選手です。

実力は折り紙付きの彼ですが、本人の中にはひとつの悩みがありました。「踏み出し足に、うまく乗ることが出来ない」というものです。

投げる前の「セッティング」を見直す

まず私が伝えたのは、投げ始める前の體の準備、いわば「セッティング」の部分でした。

投球というと、どうしても踏み出してからの動作に注目が集まりがちですが、実際にはその前の段階―軸足に乗る瞬間の體の状態―が、その後の動きの質を大きく左右します。彼にはまず、このセッティングの感覚から丁寧に伝えていきました。

なぜ「乗れない」のか―それは悪いことではない

ここで彼に伝えたのは、「踏み出し足にうまく乗れない」ということが、必ずしも悪いことではない、という視点です。

人にはそれぞれ、安定しやすい軸足というものがあります。踏み出し足にしっかり重心を乗せて投げることが合っている人もいれば、逆に、支えを残したまま投げる方が安定する人もいます。これは優劣ではなく、その人の體の使い方の特性です。

「乗れていない」と感じることが、即座に「直すべき欠点」だとは限りません。実際、踏み出し足にあまり乗らないタイプの投手の中にも、結果を出している選手は数多くいます。まずはこの前提を共有した上で、彼自身がどちらのタイプに近いのか、タイプチェックをしました。

椅子を使ったドリルで、軸の感覚を掴む

理屈を伝えた後は、実際に體で感じてもらう番です。椅子に片足を乗せた状態で、投げる動作をしてもらいました。

片足を椅子に乗せることで、軸足側にしっかりと体重を残したまま投球動作を行う感覚を、體に直接落とし込むことができます。地面に両足がついた状態では曖昧になりがちな「今、体重がどちらの足にあるか」という感覚も、この不安定さの中でこそ、はっきりと意識できるようになります。

彼自身、ドリルを繰り返す中で、自分にとって安定する軸足の使い方が少しずつ見えてきたようでした。

答えを教えるのではなく、體に気づかせる

今回の指導を通じて改めて感じたのは、「踏み出し足に乗るべき」という一律の正解に当てはめるのではなく、その選手自身の體の特性に氣づいてもらうことの大切さです。

全国優勝レベルの実力を持つ彼だからこそ、これまでの積み重ねの中で身についてきた感覚があります。それを否定するのではなく、「なぜそうなっているのか」「他にどんな選択肢があるのか」を伝えることで、本人が納得した上で次のステップに進めるのだと思います。

これからも彼の投球が、彼自身にとって一番しっくりくる形で進化していくことを楽しみにしています。

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