指導の現場で子供たちを見ていると、動きの差にすぐ氣づきます。同じ説明をしても、姿勢が整う子と整わない子がいる。差の正体は運動神経ではありません。日々の在り方にあります。
その在り方を、私は4つに分けて考えています。知育・徳育・體育・食育。この4つが揃って初めて、體は機能どおりに動き、その先に才育が在ると想っています。そしてそれは、我々大人も例外ではありません。
知育が支える機能——日本を知り、自分の住む世界の現状を知る
知育というと、勉強や知識量の話だと思われがちです。ですが私が選手たちに伝えたいのは、もっと根本的なことです。
日本の歴史や所作を智る(しる)こと、それは単なる教養ではありません。世界から見た日本がどういう国なのか、現代を生きる自分たちが、自分の住む世界の現状をどう捉えているのか。あるいは世界の現状を智ること。それらを認知することで、初めて自分の軸ができます。軸のない選手は、技術を教えても表面をなぞるだけで終わってしまう。知育は、體が機能するための「なぜ」を選手自身に持たせる作業だと考えています。
徳育が支える機能——日本人の精神が行動を変える
徳育は、規律を守らせることではありません。徳とは、人としての品性そのものです。誠実さ、感謝、敬意。内側から自然に湧き出るものが、徳です。
あいさつをすること。物を大切に扱うこと。これらはルールとして押し付けるものではなく、感謝や敬意という徳が、行動として自然に表れたものです。道具を雑に扱う選手は、體の使い方も雑になる。あいさつが疎かな選手は、周囲との連携も疎かになる。品性が整っている選手ほど、體の扱いも丁寧になっていく。徳育で伝えている精神は、そのまま體育の土台にも直結しているのです。
體育が支える機能——體の使い方がパフォーマンスを決める
體育は、體の使い方そのものを伝える領域です。姿勢、呼吸、重心のかけ方。體がどう機能しているかを選手自身が理解することで、パフォーマンスは確実に上がっていきます。
ここで大切なのは、力任せの動きとは違うということです。體の機能を理解した上での動きは、無駄がなく、疲れにくい。技術指導の前に、まず體が正しく機能する状態を作る。これが體育で最も重視している部分です。
食育——最重要にして最難関
4つの中で、最も重要でありながら最初に着手すべき領域が食育です。理由はシンプルで、體を作っているのは食事だからです。
疲れやすさ、體力、持久力。これらはすべて、日々の食生活に直結しています。どれだけ知育で軸を作り、徳育で精神を整え、體育で機能を伝えても、材料となる體そのものが整っていなければ、その効果は半分も発揮されません。
ですが食育は、4つの中で最も実装が難しい領域でもあります。特に子供が対象の場合、本人の意思だけでは完結しません。日々の食事を用意し、選択を決めるのは保護者です。保護者の理解と行動が伴わなければ、どれだけ子供に食の大切さを伝えても、現場では機能しないのです。
これは指導者側の課題でもあります。子供に直接届ける言葉と、保護者に届ける言葉は別物です。両方に機能する伝え方を、日々の指導のなかで試行錯誤しています。
4つの柱を、機能する形で組み立てる
知育・徳育・體育・食育。どれか一つが欠けても、體は機能どおりに動きません。
知育で日本を知り、自分の住む世界の現状を認知する。徳育で品性を育て、日々の行動を変える。體育で體の使い方を伝え、パフォーマンスを上げる。食育で體そのものを整え、疲れにくく持久力のある體を作る。
この4つは、それぞれ独立したものではなく、互いに支え合っています。中でも食育は最重要でありながら最難関という、特殊な位置にあります。だからこそ、優先順位を明確にして着手していきたいと考えています。
體を機能どおりに動かせる状態へ。4つの柱を、一つずつ現場で組み立てていきます。

