「脱力して」は、伝わらない
指導の現場で「脱力して」という言葉をよく耳にします。しかし私は、この言葉を意図的に使いません。
理由があります。
「脱力」という言葉は、聞いた選手に「力を抜く」というイメージを与えます。しかしそれは、私が伝えたいこととは違います。
「脱力」と「抜力」は、違う
脱力(だつりょく)と抜力(ばつりょく)。似ているようで、まったく別のことです。
抜力は、力を抜くことです。全身の緊張をゆるめ、ぐったりとした状態になる。これは、競技の場面では使えません。
脱力は、脱・出力です。
これは、内側に溜まった力が外に脱出されることです。
他にもは、過剰な出力から脱すること。不要な緊張が消えた状態のこととも言えます。
「力を抜く」のではなく、「余分な力が自然と外へ出ていく」——これが、本来の脱力です。
體の筋力が効率よく機能したとき、脱力は自然と起きる
脱力は、意識して起こすものではありません。
體の筋力が効率よく機能すると、自然と脱力します。どこか一部に過剰な力が入っていると、その部位が他の動きを妨げます。必要な筋肉が働けない状態になる。だから、パフォーマンスが落ちます。
逆に、體の各部位が適切に機能しているとき、余分な緊張は消えます。「脱力できた」という感覚は、機能が整った結果として生まれるものです。
私が見極めているのは、そこです
指導の現場で私が観察しているのは、體のどこに過剰な力が入っているかです。
肩に力が入りすぎている。腕に頼りすぎている。体幹が固まっている——こうした過剰な出力の場所を見極め、そこを解放することで、體は機能どおりに動き始めます。
「脱力して」と言葉で伝えるのではなく、機能が整うことで脱力が起きる状態をつくる。それが、私の指導のアプローチです。

