中学3年生の秋から違和感が始まり、高校1年の2月にはラケットが握れなくなっていた女子高生がいました。
彼女から声が掛かったのは、高校2年の4月末のこと。そこから約1年半、週1回のレーニングを続け、彼女は福井県トップを競う選手として引退の日を迎えました。
今回は、その全記録をまとめてお届けします。
なぜ上手くいかなくなったのか
きっかけは中学3年生の時に受けたサーブ指導でした。
彼女の4スタンスタイプはA1(前軸内旋型)。ところが受けた指導は「肘を身体の後ろに引く」という、彼女とは異なるタイプの動作でした。
※4スタンス理論:人の重心軸は血液型のように、生まれながらに4つのタイプ(A1、A2、B1、B2)のいずれかに属するよう分かれ、それによって個々に沿った身体の使い方がある
最初は不思議なことに、それでもサーブが決まりだしました。
これが「不運」でした。
数ヶ月後、突然サーブが入らなくなりだすと、今度は動作そのものに意識が向きすぎてしまいました。A1タイプはひとつひとつ丁寧に問題を解決しようとする傾向があります。その真面目さが、逆に身体の自然な動きを奪っていったのです。
高校1年の2月にはラケットが振れない状態にまで悪化していました。
初回指導で起きた劇的な変化
まず「正しく立つこと」から始めました。
彼女に合った体操、スクワット、お尻歩きで軸をつくり、体幹を動かしやすくしてから、スポンジボールを素手で打ち返してもらいました。
段階を踏んで、こう進めました。
① 投げたボールを打ち返す → 振り遅れが出ている
② 両手を合掌してから打ち返す → 急にボールが返ってくるように!
③ ターゲットを決めて、合掌してから狙って打ち返す → 返球の勢いが凄まじくなった✨
「振り遅れてる」とは一言も言っていません。
「あそこに返す!」という目的を持ってもらっただけで、身体が勝手にナチュラルな動きをしはじめました。
この日気づいた「あること」とは――「目的を持つこと」でした。
1ヶ月後:部活に戻れた
週1回のトレーニングを続けること1ヶ月で、ラケットが振れるようになり、苦手だったバックハンドが得意になり、部内試合にも参加できるまでになりました。
実戦を見学すると、フォアハンドで打ち返す直前に手が変な動きをして、肘が後ろへ流れていることが分かりました。
【問題点】手の動作がおかしい
【結果】振り遅れ・空振り・力が伝わらない
【原因】じつは、足の軸(前軸型なのに、後ろ軸で打っていた)
【修正点】構えで前軸を大げさに作る
問題が出ている場所と、修正すべき場所は違う。
これはトレーニングの本質でもあり、整体においても同じ考え方です。構えの軸足を直しただけで、変な動作が消えました。
1ヶ月半後:高校総体で北信越へ
試合3日前の練習では「今日、やばい…」と本人の状態も悪く、お尻歩きやビーチボールでキャッチボールをして調整しました。
ゲームになると動きが良くなり、球出し練習になるとおかしくなる。
意識が動作に向かっているか、目的に向かっているかの違いです。
その後の高校総体では、ダブルス・シングルス共に北信越出場を果たしました🎉
北信越大会では、他県の県大会3冠シード選手に勝利。2ヶ月前までラケットを握っていなかった選手が、です。
8ヶ月後:全国大会出場へ
北信越高校選抜大会では、ダブルス5戦3勝、シングルス4戦全勝。チームのキーマンとして全国出場権を獲得しました。
先生から「彼女が勝つとその試合、チームも勝ってましたよ」という言葉をいただきました。
この頃から彼女自身の「自分の體へのアンテナ」が育ってきました。
「右足だけ、足裏が真っ直ぐ踏めてない感じがして、外側に乗ってる感じがします」
最初から右足の内反は気になっていましたが、ついに本人がそれを感覚で捉えられるようになったのです。センスは生まれつきではなく、作ることができます。
高校3年・引退まで
フォアハンドの変な動作は完全に消えました🎉
引き続き2つの課題に取り組みました。
① サーブの力強さ
彼女の前足重心を活かした足の運びに調整し、キレのあるサーブへ変わりました。先生(後ろ軸型)の動きをそのまま真似しても力は出ません。タイプが違えば、正解も違う。
② ワンプレー後の動きの遅さ
「構えを解かずに振る」「打ったらすぐステップを入れる」。動き続けることでミスは減り、次の動作が圧倒的に速くなりました。これは野球やの他のスポーツの構えにも共通する話です。
インターハイ予選では惜しくも優勝校に当たり北信越止まりとなりましたが、北信越ではベスト16・ダブルスベスト8。ラケットを置いていた状態から約1年で、福井トップを競う選手になりました。
この1年半を振り返って
卓球のルールも道具も、指導を始めた時点では何も知りませんでした。
それでもできたのは、扱う対象が「人間の體」であることは、競技が変わっても同じだからです。 道具とルールが変わるだけで、體の理(ことわり)は変わらない。
その時、特に感じたのは、指導者の姿勢の大切さです。
顧問の先生は、競技未経験の私に対して最初から協力的に関わってくれました。若い頃に全日本学生チャンピオンにもなった先生が、選手のために広い視野で受け入れてくれたこと、その環境があったからこそ彼女は復活できました。
「他の選手もみてもらえますか?」
「県外の先生に紹介してもいいですか?」
と言っていただいた時は、本当に胸がいっぱいになりました😭
體の不調を「経験不足」や「練習不足」で片付けず、體の理に立ち返る。
それが體・研究所のアプローチです。
卓球に限らず、動きに違和感を抱えているアスリートの力になれるよう、これからも精進してまいります😊🏓

